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エスキス アムール

第28章 バレンタインデイ キッス



「ねえ、波留くん」

「んー?」

「キスして」

「ん。」


いつものように
ほっぺを突き出す。


うん。いいよ。
寝る前はね、それでいいよ。
違うじゃん!
まだ全然寝る体制に入ってないじゃん!


それに今僕は、
キスをしてって言ったんだよ。


「違うよ!
唇に、キスして?」

「な、…」


彼は顔を赤くして
こちらをみた。

酷くバカにしたような目で
呆れられたような目で

見つめられる。


そそる、
そそるだけだぜ。



「いやにきまってんだろ…」

「お願い、ちょっとでいいから」

「なんでだよ!」

「今日はバレンタインでしょ?」

「関係ないだろ!!」




彼はむすっとして、
食器を片付けに行ってしまった。



別に、本気で言っているわけじゃない。
流石の波留くんだって、
キスはしないだろう。

もう、彼には手を出さないと
誓ったのだ。
そうしなければ、
彼を手放せなくなるから。


せっかく我慢して
元の生活に戻そうとしているのに

ここでキスなんかされたら
もう、戻れなくなってしまう。

…自分がキスしてっていったんだけど。









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