
エスキス アムール
第28章 バレンタインデイ キッス
だけど、彼の顔を赤くする姿は
いつ見ても良い。
からかいがいのある。
とは、このことだ。
少しだけ、
もう少しだけ、からかおうかな。
食器洗いを終えて隣に座った彼を
おずおずとみる。
綺麗な横顔がテレビを見つめていた。
「…なんだよ」
彼の視線はテレビを見たまま。
こちらを見ようとしてくれない。
視線を逸らして、
また、おずおずと見る。
「なんだよ。」
あ、今度は少しこっち見た。
また、視線を逸らして、
またおずおずと見る。
「もーなに?!」
今度こそ彼は、僕の方を見てくれた。
その顔は非常に最高に
面倒くさそうな顔をしている。
可愛い。
楽しい。
からかうの。
「キス…」
「嫌なものは嫌、
おかしいだろ。キスなんて!」
僕がシュンとして見つめると
威勢のあった波留くんは
少し身じろいだ。
そこを突く。
「今日…仕事、疲れた…」
「…」
「波留くんに
チョコ買ってこうと思ったけど
重いかなと思ってやめた…」
「…っ」
「でも波留くんが
チョコ作ってくれてて
テンションあがった…」
「…っ」
「キス、したい…」
「…はあ〜」
彼は、頭を思いっきり抱えた。
