
エスキス アムール
第28章 バレンタインデイ キッス
また、小さな溜息をつく。
「最近、お前変じゃない?」
ふいに、彼が僕に声を投げかけた。
少し振り向けば、
彼は掛け布団から顔を出して
こちらを見ていた。
「…変って…?どこが…?」
「いや、べつに…っ」
目を合わせると、
また布団の中に沈んで行く。
変なのは波留くん何じゃないの?
ジョークなのに、
キスもするし。
視線もいつもと違うし。
僕をからかっているのだろうか。
また、背を向けて枕に顔をうずめる。
後ろで彼がモゾモゾと動いた。
少しだけ、温かさが伝わってくる。
だけど、くっついて寝ていないからか
まだ、自分の足は冷たかった。
「お前…、恋人でもできたの…?」
また、ポツリ、
布団の中から声が聞こえた。
振り返ると、今度は顔を出していない。
何でそんなこと聞くの?
「恋人なんていないけど…」
「…」
その声に彼は顔を出して、
こちらを見つめる。
すこし、彼の冷たい足が
僕の足に触れた。
その冷たさに驚いてすぐに足を引っ込める。
「何でそっち、向いてるんだよ」
「…」
「こっち、向けよ」
彼は少しむくれて、
僕の肩に手をかけてこちらを向かせる。
久しぶりに、彼の吐息が
僕にかかった。
