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エスキス アムール

第29章 彼からの誘惑






そんな努力もむなしく、
彼は知ってか知らずか


言った。


「…どうして?」

なんで、噛みつかないの?と。



さすがに、僕でもイラっとするよ。
それは。
さすがにね。

波留くん、怒るよ?




普通聞く?
なんで噛みつかないのって?



聞かないよ。

あぁ、普通じゃないのね。
この子。


じゃあ私めが
一から説明してつかわしましょう。


「波留くんさ、

わかってないよ。
噛み付いたらどうなると思ってるの?」


「…痛い。」


イラ。


「……あのさあ。
その先のこととか考えないわけ?!

ちょっとは、考えなよ!
天然だなぁ!」


「考えてるよ。」


「ほらね。
だから、波留くんは……って。」




今、なんて言った?


「だから、考えてるって。
……その先のコト。」


なにいってるんだこの人。
何が言いたいんだ?
僕をどうしたいんだ?
僕にどうさせたいんだ?



だめだ。

この秀才には、
やはり勝てないのか。

さっぱりわからない。


もう、これ以上、
僕を苦しめないでくれ。

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