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エスキス アムール

第29章 彼からの誘惑






本当に、この先もしていいのか?

何が狙いなんだ?
ただ、欲求不満なだけ?


戸惑いを隠せずに首から唇を離し
何もしないでいると、

フラッと、目が開く。



「…」


こちらを見るその瞳は

なんで、何もしないの?
と言っているようだった。


「…波留くん?」


「して…?…いいから…」


してって…、
セックス、だよね。

他にないよね。


この人、正気なのか。
だけど、
彼を見ても寝ぼけている様子もないし
アルコールを飲んだ様子もない。


いたって正常のようだった。



きっと、こんなことは彼女にも
言ったことがないだろう。

僕とするときは
彼はつまり受けなわけだけど。

女性とする時は違うはず。


恐らく彼が攻めだ。

そして多分、
軽くいじめるタイプのはずだ。


あの彼女にも言ったことのない言葉。
それを僕に言ってきた。

今が朝なんて気にしない。

好きな人にしてくれと、
頼まれてるんだ。

僕が手放せなくなるとか、
そんなことは彼には関係のないことなのだ。

これ以上好きになったとしても、
苦しむ未来が待っていたとしても

好きな人のこの頼み、
断るわけにはいかない。



僕は欲情するその瞳から
目を離すことなく、

彼の唇に吸い付いた。




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