
エスキス アムール
第32章 彼と実験
唇を離して、彼の瞳を見つめる。
その瞳はうるうるとしていて、
とても色を含んでいた。
彼の頬に触れ、続きの言葉を促す。
「俺は…俺は…っ」
「ん?」
「…木更津のこと…好きだよ…」
その言葉に
心臓がギュッと握られたように
痛くなった。
それは甘い痛みだ。
彼はきっと、
人の気持ちの変化に
敏感になのだと思う。
少しでも自分から気持ちが離れているのではないかと思うと、きっと苦しく、居ても立っても居られないのだろう。
ここのところ、
(僕のせいだけど)
僕が帰ってくると、
ボーッと何か考え事をしていて。
僕の姿を見つければ
不安と期待が
入り混じったような、
哀しい瞳で僕を見つめる。
僕が冷たくするたびに、
その色は濃くなった。
僕が何も言わずに、
彼を見つめてもう一度キスをしようとすると、
彼はそれを拒否して僕に背を向けた。
後ろから手を回すと、
彼はその手をほどこうとする。
「や、やめ…っ」
足を絡めて無理矢理服の中に
手を忍ばせば、彼は激しく抵抗した。
