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エスキス アムール

第32章 彼と実験





肩で呼吸を繰り返す彼は、
もぞもぞと動いて、
僕の方に向き直ってこちらを見つめた。

その瞳は涙で濡れている。
こんなに泣かせたのに、
僕は、その涙が愛おしくて仕方なかった。



「…う、そ…?」

「嘘じゃない。
波留くんが好きって言わないし、
僕が求めるばっかりだから
待ってた。」

「…、好きっていった…」

「いつ?波留くん嫉妬しただけで
好きって言われてないよ。」

「……、」



波留くんは瞳をゆらゆら揺らしたまま、この間の記憶を呼び覚ましているようだった。
本人はもう、好きだと伝えていたつもりらしい。



「そんなに、不安だった?」

「また、どっか行くと思った…」

「僕はどこにもいかないよ」



誰と一緒にしてるんだよ。
あの彼女に、また少しだけ
嫉妬が湧き上がってきた。

それでも、今彼は
僕の服を握って、僕だけを見ている。
その状況に溜飲を下げた。


彼を抱きしめると、
果てたはずのソコは

また、熱を持っている。

彼の瞳を見れば
触れてくれと言っていた。


「波留くん
もう、立派なホモだね。」

「……萎えそうだからやめて」


彼の唇に吸い付けば
彼は目を瞑る。

僕のことを感じている姿は
いつまでも見ていられた。


「それにしても…酷すぎるよ。」

「え?」


いくら求めて欲しかったからといって、いくらなんでもやりすぎだと言いたいらしい。



「あんなに冷たくしなくたって…」



彼はポツリと、いじけながら呟いた。






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