
エスキス アムール
第33章 彼のシゴト
1週間が経過した頃、
俺が復帰したということは
ニュースで報じられた。
擁護の声も多かったからだろう。
少しだけ株価も上がる。
そんなもんだ。
これも。
だけど、もっと上がるのは
これからの腕次第だ。
まずは信頼回復に努めなければならない。
今日も多分遅くなるから
夜飯作れないな。
木更津の顔が浮かんだ。
仕事をする手を止めて時計を見る。
恐らく木更津と帰りが同じくらいだろう。
その旨を伝えるメールを送ると
すぐにメールが返ってきた。
『じゃあ、
先に帰ったほうが出前取ろう♡』
ハートはやめろ
ハートは。
仕事しろよこのホモ野郎。
あ、俺もか。
顔を綻ばせていると、
視線を感じた。
そーっと、
そちらの方を見ると
「うわっっ!!」
「だ、大丈夫ですか…?
ニヤついてますけど…」
観月Jrだ。
「べ、別に大丈夫…
って、ニヤついてないよ!!
馬鹿!!
あ、馬鹿は言いすぎたごめん…」
一人で盛り上がっている
俺を、怪訝な瞳で見つめる。
笑って誤魔化した。
「で?なに、どうしたの?」
「あ、大野さんとお話したいって…」
そう言って後ろから覗く顔。
「あ…」
それは、騒動から
何ヶ月も見ていなかった、
久し振りに見る顔だった。
