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エスキス アムール

第33章 彼のシゴト




もう半年近く前のことを
思い出して、黙っていると
彼は頭を抱えながら続けた。




「電話で謝ることじゃないって思ってなんとか会おうとしたんだけど、いつ行っても家にいないし」




もうその頃にはホテル滞在で、
随分とやさぐれていたな。
ニュース見て、もうこの会社潰れるななんて考えて。

たまに彼女のことを思い出しては
ダメだと思い直して。



「それで、
無実になったって聞いて
いてもたってもいられなくなって
電話したんだけど出ないし…」


それがあの電話だったのか。
俺がホテルにいるあいだ、要はずっと家に通ってくれていた。
それを聞いて申し訳なく思う。


あの興信所を乱用している
木更津でさえも、俺がどこのホテルに滞在してるのか探すのに時間がかかったらしい。

だから、要に探すのは到底、無理だろう。



「それから、また家に行ったら、
もう誰も住んでませんって言われて…」



木更津の家に住んでるから。
それで今は…って、

言えない!!

大学時代、あれだけ否定した

『大野波留ホモ説』


しかし、
今となっては列記としたホモだ。
いや、待て。バイだ!

まだ要には言えない。
なんて反応をされるか…

もしかしたら、爆笑されるかも…



「今、波留どこに住んでるの?」

「ゴフッ!!」


飲みかけていた水を吹き出した。









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