
エスキス アムール
第37章 彼を想ふ
「俺ってそういう感じに見える?俺のこと振ったのもそれが原因だったんでしょ?」
なんと。
二人は付き合っていたのか。
しかも、彼が振られたらしい。
彼女もきれいな人だったけど、彼を振るなんて。
なんてもったいないことを。
聞き耳を立てる体に力が入った。
「ごめんなさい。
波留って、一緒にいてもどこか遠くを見ている時があって。
私のこと好きじゃないのかなって不安になった時があったの。
その時にいろんな噂聞いて…」
「…そっか」
「波留のこと嫌いで別れたわけじゃないの。
……私たち、またやり直せないかな…。」
噂。
彼があんなに必死で否定するホモ疑惑。それに関係があるのだろうか。
彼女は必死に弁解すると、真剣な面持ちで彼に告白をした。
おいおい。
こんなところでそんな話するのかよ。
まあ聴いてる僕も聴いてる僕だけど。
彼女の決死の提案に
彼は優しい瞳を彼女に向ける。
お酒もあって頬は赤くなり、
瞳はうるうるだった。
あんな瞳で見つめられたら
僕だったら我慢できない。
抱き付いてキスをしてお持ち帰りだ。
だけど、
そんな表情とは裏腹に彼は厳しく言った。
「…それは……無理だよ。」
