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エスキス アムール

第37章 彼を想ふ




さっき、優しい瞳で彼女を見ていた彼から出た言葉だとは思えないほどの

それはそれは、冷たい声色だった。


一瞬本当に彼が出した声なのかと疑ったくらいだ。
彼の言葉に驚いて足を止めて振り返る。


彼は、彼女に「ごめん」ともらして、眼下に広がる夜景を見つめていた。


「……そ、うだよね…
ごめんね…?じゃあ、また…」


そんな彼を見るのは初めてだったのだろう。
彼女は彼の様子にすっかり怖気づいてしまったようだった。

そして彼女は背を向けた彼の背中に詫びると、涙を流しながら去って行った。



彼は彼女の足音が聞こえなくなるまで振り返ろうとはしなかった。

すっかり辺りが静まった頃、彼は彼女が去って行った方見つめて



「ごめんな、歩」


そうつ呟いた。
そうして、泣きそうな瞳でまた空を見上げて言う。



「あの人…
なんで今でてくるかな…」


そのときは
僕にはその言葉の意味はなんのことだかさっぱりわからなかったけど

彼は何かを抱えている。
そう思って。


もう、彼のことを
調べずにはいられなかった。














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