
エスキス アムール
第37章 彼を想ふ
知り合いの興信所で
彼のことを隅々まで調べてもらって、彼の生い立ちを知った。
知ったらどんどん欲が止まらなくなって会いたくなって
だけど、そのパーティーから彼に会うことはなかった。
そうそう会えるものではない。
初めて職権濫用をした。
観月製薬の社長はあいつだったし特に手を組む気はなかったけど。
メリットがないわけでもない。
彼に近づくために共同開発を組んで接待をセッティングした。
今思えばあの接待は彼はトラウマがある三嶋がいるし、
社長はすぐ女のところに行くし
秘書は使えないし。
そして、
信頼しようとしていた目の前にいる僕は彼が苦手とするホモだし。
気が気ではない接待だったはずだ。
それ故、彼が見せるのはあのパーティーで見せていた爽やかな笑顔で、
ふにゃりとした笑顔を見せることは
一切なかった。
興信所の調べで
彼がホモを苦手としていることを薄っすら教えてもらっていた。
まさかその原因が、近くにいた三嶋だったとは思いもしなかったけど。
ホモが苦手なら、
最初、表向きの顔を見せて信用を築き、後々カミングアウトして、となると
何より時間がかかるし、
カミングアウトした時に
せっかくコミュニケーションをとってきても、
一気に距離を置かれる可能性が高い。
それだったら最初からアクセル全開にして僕を知ってもらうしか無いと考えた。
案の定。
というか、想像以上に彼は嫌な顔をしたけど。
あの時の彼はビジネスマンではなく、ただの大野波留だった。
