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エスキス アムール

第41章 思わぬ再会




「あの、大野さん」

「夜の営みなら最近ねーよ!
忙しくて最近は…」

「そうじゃなくて…仕事のことです」



急に真面目な顔をして、こちらを見る。
夜の営みについて答えた俺がなんか恥ずかしいじゃないか。

切り替えが早すぎるんだよ。全く。



「なに?」

「この間の、新しい企画みたいなものを考えるってやつ…」



高峰も慣れてきた頃だから、何かやりたい事はないかと先日聞いた。
会社にとってプラスになること。

高峰の意見がよければ、それを取り入れようと考えていた。





「うん、どうした?」

「一人紹介したい人がいまして」



聞けば、休みの日、少しでも住んでいる周辺に詳しくなろうとよく歩き回っていたそうだ。
そのときに道端で絵を書いていた女の子と会ったらしい。

その絵がとにかく好きになり、うちの商品のものに取り入れられないかと考えたそうだ。

初めはハンカチのデザインを俺と考えてもらって、そのうち雑貨のワンポイントにも使えないかという提案だった。



「その人に了承は得ているのか?」

「はい、もし気に入ってもらえたら描きたいと言ってくれています。」




道端で絵を描いている人。
その情報だけだったので不安要素はあったが、ちゃんと聞けば、日本からここに来て、今はスクールに通いながら、休みの日になると公園などで絵を描いているらしい。

絵を見せてもらうということと、要の意見も聞いて会ってから決めることにした。




「それで、来てもらえるのはいつ?」

「来週の金曜日に来てもらうことになっています」

「わかった、要にも伝えておいてね」




日本人はニューヨークにいてもおかしくないけど、よくそんな人が見つかったなと思う。
絵のテイストにもよるけど、デザインに関して第三者の意見を聞くことは大事だ。


いい出会いになればいいけど。
高峰が初めて持ってきた案だ。
できることなら叶えてやりたい。

このときは何も考えずに、そう思った。







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