
エスキス アムール
第41章 思わぬ再会
「高峰が言ってたのは、はるかちゃんだったんだね」
「あ、あの…すみません、なんか…」
「高峰が謝ることじゃない。
はるかちゃんの絵は確かに素晴らしいよ。」
その言葉にホッとする。
だけど、絵を素晴らしいと知っているということは、彼女のことを知っているということだ。
一体どこで…
まったく接点がわからない。
変わらず彼女は震えていた。
はるかちゃんと呼ぶ大野さん。
大野さんを見て泣きそうになっている彼女。
大野さんという名前を聞いて青褪めた顔。
見せてもらえなかったスケッチブック。
まさか、まさかな。
関係ないだろう。
思い過ごしだ。
何度も自分に言い聞かせた。
「高峰!!営業行くぞ!!」
「え、あ、ちょっ…要さん!!」
要さんはバッグを手にして俺を引っ張ると、会社から出た。
なんで、こんなことするんだ。
どうして二人きりなんかに…。
どうしても何故か二人きりだけにはしたくなかった。
だけど、
俺には彼女が震えている理由も、宥め方もわからない。
大野さんがそれを知っているのなら任せるべきなのだろう。
またひとつ、彼女との距離が空いてしまったようで、
もどかしくイラつく自分を抑えることはできそうになかった。
