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エスキス アムール

第41章 思わぬ再会

【はるかside】





二人の間に沈黙が訪れた。
要さんの様子をみると、気を遣って二人きりにしてくれたようだ。


早く謝らなきゃと思うのに声が出ず、頭の中はパニックだった。


目の前に大野さんがいる。
それだけでおかしくなりそうなくらいドキドキするのに、その上言葉を紡ぐなんて無理に決まっている。


だけど要さんがせっかく…、


無駄にしてはいけない。
そう思って大野さんに視線をあげると瞳がバチリと合って、より一層、心拍数が上がった。



「取り敢えず…、座って…?」



優しく声をかけられる。
飲み物、ミネラルウォーターしかなくてごめんね。と、冷えて美味しそうな水を出してくれた。


お構いなくと、声に出したいのに
喉からはヒューヒューと、掠れた空気の音しか出てこない。


やっとの思いで座ると、大野さんも私の目の前に座った。


その瞳は優しい。
困ったように笑って私を見つめるその瞳を見るだけで、あの頃に戻ったように、胸がギュッと苦しくなった。

けれど、ずっとこんなことが続けばいいのにと思ったあの頃とはもう違う。



「ごめんね、こんなところに呼び寄せちゃって」

「……」



声が出ない代わりに、大きく首を振った。


謝らなきゃ。謝らなきゃ。
それで頭がいっぱいけど、どうすることもできない。



「高峰から話は聞いていると思うんだけどね、
社員にってことじゃないんだ。
うちもまだこんな感じだしさ。

もし、デザインに協力してくれるなら、描いてもらって採用したら、そのデザイン料をその都度渡すっていう感じになると思うんだよね」


謝らなければということで頭がいっぱいの私とは違い、
大野さんは淡々と仕事の話を始めた。


どうして彼がニューヨークでこの仕事をしているのか全くわからなかったが、

観月製薬が立ち直り始めた頃に大野さんが仕事を辞めたのは、これがしたかったからなのだと思った。








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