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エスキス アムール

第43章 だから言ったのに。

【波留side】




「な、なにこれ!!」

「プレゼント」



そう言って出された箱を見て、ようやく今日、木更津が俺を食事に誘った理由がわかった。

これを渡すためだったのだ。



その箱を開けてみると、二つの腕時計。


黒いベルトに金で縁取った紺の羅盤。
シンプルだけど、あまりないデザインで、とても良い。

それをとって後ろをみると、


H.K

と、二人のイニシャルが彫られていた。



二人だけの世界に二つしかないペアウォッチだ。


「首輪代わりにね。
それなら、つけてても全く不自然じゃないでしょ?」

「うん!うん!!
すっごい嬉しい!このデザイン好き!
ありがとう!木更津!」


はしゃぐ俺を、木更津は優しく見つめていた。



…首輪代わりって、なんだよ。
と、ワンテンポ遅れて思ったけど、口を噤んだ。


突っ込むことよりも、嬉しさの方が勝って、
急いで左手首につける。

もうひとつの方も木更津につけると、顔が自然と綻んだ。



「これで、忘れないかな。
波留くんが誰のものかって」

「俺は木更津のもの。
木更津は俺のもの!」

「ふふ。それはどうかな。」



また意地悪にそんなことをいう彼を無視して、ワインを流し込んだ。
あれだけ制限しなきゃと思っていたけど、今日はそんなことどうでもいい。


新しく感じる左手の重みに、幸せを感じる。
目の前をみれば、同じものが光っている。

お揃い。
ただそれだけのことなのに、どうしようもなく嬉しかった。









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