
エスキス アムール
第43章 だから言ったのに。
「えっと、鍵、鍵…」
家の鍵を開けるために木更津が俺の手を離す。
ずっと握られていた手が物寂しく感じた。
「あれ?どこやったっけ?」
キスしたい。
キスしたい。
なんで俺はこんなに盛っているのだろうと疑問に思いながらもまた、キスをしたいと思った。
もう、我慢できない。
「波留くん、持ってない?」
「もってない。」
「持ってないわけないでしょ
波留くんのだしてよ。」
頭の中は鍵じゃなくてキスのことで頭がいっぱいだ。
早く触れてキスをして、肌を重ねたい。
鍵がなくて探しているだけ。
それだけなのに、目の前にいる木更津がどうしようもなく愛おしく感じる。
なんでだろう。
こんな気持ちにさせるのは何なんだろう。
「木更津…」
「あった?か…ぎ…、…!」
好きの上が大好き。
大好きの上は愛しい。
愛しいの上は無いのだろうか。
愛しい以上に愛しい。
もう我慢ができなくて、鞄を床へ投げ捨てると、俺は彼の瞳に吸い込まれるように近づき、
その唇を、音もなく奪った。
