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エスキス アムール

第45章 困惑と介抱





俺はさっきまで木更津に抱かれていた。
それは間違いないんだ。
どうしてここにいるのか全くわからないけど、自分の手首に時計がないことがどうしようもなく俺を不安にさせた。



『プレゼント。首輪代わりにね』



木更津の言葉を思い出す。
木更津に抱かれていたときは、つけていた。
木更津にプレゼントしてもらってから、風呂に入る以外ずっとつけていたのだ。


寝るときも、何をするときもずっと。
木更津に意味もわからないまま、裸にされて、快感を与え続けられている時でさえ、ずっと付けていた。


自分で外すはずがない。
だとしたら、考えられることは…




「…きさらづ…」



嫌だ。嫌だ。



首輪だと言っていた腕時計。
木更津が外したのだとしたら、ここに連れてきたのだとしたら、俺は捨てられたってことだ。





「大野さん…っ?!」




手が震える。
身体はまだ思うように動かなかった。だけど、それどころじゃない。

俺は、はるかちゃんが呼び止める声も聞こえないまま走り出した。


人通りの少なさから、夜中なんだと改めて気が付く。
ネオンが輝いている方は、まだ人がたくさんいるのか、ざわざわと賑やかな声や音楽が響いていた。


正直言って、どこをどう行けば自分の家に帰れるのかもわからない。

とにかく見慣れたところに出なければと、ネオンの方に近づくと、駅も見つかりだんだん見慣れた景色になった。


タクシーを捕まえたいけど、財布も携帯も何も持っていない。

とにかく走って走って、
自分の家に着くと、インターホンをたくさん押しまくった。





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