
エスキス アムール
第47章 教え込まれたカラダ
嘘だろって。
まさか彼女のあんな姿を見て勃ってないなんて、言えるはずもなかった。
気がつかれないように、彼女には近づかないようにしていた。
彼女に説明をするよりも、自分の中で整理をつける方が先決だったのだ。
ベランダに出て、日中よりも少しだけ涼しくなった夜風に当たる。
心に空いた穴みたいなものがどうしても埋まらなくて、どうしたらいいのかもわからなかった。
最近までは満たされていた。
何で今は…
そう思って無意識に右手が左手首を掴んだとき、木更津の顔が浮かぶ。
…あいつのせいだ。
その次に心臓を抑えながら、その言葉を口に出して呟いてみる。
口に出したところで、何も変わらなかったけど、その言葉は闇の中に吸い込まれて行った。
あいつ、なにしてんだろうな。
優雅に一人暮らしして、誰か連れ込んでんのかな。
足に力が入らなくなって来て、座り込む。
目をつむって、あいつとのセックスを思い浮かべた。
家から締め出される直前なんて、やばかった。
快楽で死にそうと思ったことなんてなかった。
だけど…
「……あ……っ」
あいつの、俺を翻弄する手を、指を思い出したら、俺のものが反応を示した。
ああ、なんで。
ちゃんと、反応するじゃんか。
いっそのこと、誰にでも反応しなくなったのだと思いたかった。
いろんなショックで、勃起障害にでもなったんだって思いたかった。
だけど、ちゃんと反応をしている。
他の人はどうだろう。
友達で試すなんて、本当に気が引けたけど仕方が無い。
状況が状況だから、三村とかで試して見たけど罪悪感が優って、むしろ、萎えた。
…なんであいつだけなんだ。
困るじゃんか、あいつに捨てられてるっていうのに。
『波留くんは、僕のものだよ。』
そのとき、毎日のように最近いっていた木更津の言葉が頭の中に響く。
そして、最近のあいつの行動を思い出した。
「あいつ…バカじゃないの」
そうして考えを巡らせたとき、
どうしてあんなに俺を快楽漬けにしたのか、ようやくわかった気がした。
