
エスキス アムール
第50章 甘えたい甘えられたい
木更津の両親は離婚していて、母親が木更津を引き取る事は叶わなかったらしい。
木更津は小さい頃から父親が大嫌いで、母親もいなくなった当時、唯一心を許したのがその、光弥さんと呼ばれる執事だったそうだ。
「光平様の名前はとても素敵ですね。
僕の名前にも光と言う字が入ってるんですよ。お揃いですね。」
父親につけられたその名前が嫌いだとこぼす幼い彼に、その光弥さんは穏やかにそう言ったそうだ。
それ以来、木更津は自分の名前を好きになれたらしい。
最初は甘えん坊で、隆さんや光弥さんがいないと何もできなかった木更津も、光弥さんに影響を受けて、性格や立ち振る舞いも光弥さんに似ていった。
あるとき久々に会った隆さんに、光弥さんにそっくりになったなと言われ、そこではじめて気がついたそうだ。
