
エスキス アムール
第50章 甘えたい甘えられたい
確かにテレビで木更津議員を見ていても、申し訳ないけど話し方は傲慢で強い感じだし、笑いかたもまるで似ていない。
…なんていうか、笑えていないかんじ。
木更津の穏やかな微笑みも、綺麗な言葉遣いも、他人から影響を受けたと言われたら、納得ができた。
「僕は、物心つく前から光弥さんとずっと一緒でね。
気が付いたら、光弥さんの事が好きになっていたんだよね。」
食事の作法から、所作まで全て光弥さんを見て光弥さんに染まって行ったそうだ。
キスを交わしたのも、身体を交えたのも、光弥さんが最初。
穏やかにそう話す彼をみて、一つの疑問が浮かぶ。
そんなに好きで、そんなに密な関係だったのなら、どうして別れてしまったのか。
「もしかして、親父さんに?」
「ううん、父さんはね僕の事なんて見ていないからね。
気が付かなかったよ。
気が付いたのは、彼のお葬式のときかな」
「葬、式…」
思いがけないワードが出てきて、思わず言葉に詰まった。
