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エスキス アムール

第50章 甘えたい甘えられたい




「交通事故でね。即死だったみたい。」

「……」

「いつも通りの朝だったんだよ。
おはようのキスをして、僕は学校に行った。
そしたら、電話がかかってきてね。

僕はそれからすっかり憔悴しちゃって。
あまりの憔悴っぷりに、父さんが勘付いたんだ」


「それで…」


「うん、それで今じゃお手伝いさんはみんな女性。」



「もうね、人なんて愛せないって思ったんだよ。
光弥さんが亡くなって、一番頼りにしてた人がそばから急に居なくなって。
だけど、波留くんを初めて見たときは、なんでかな。
一瞬にして、心を奪われたんだよね。」


そう言って優しく俺を見つめて、キスを落とす。
かすめる程度のキスだったのに、そこがどんどん熱くなって行くのがわかって、恥ずかしかった。


「こんな言葉、どっかの軽い男が使いそうだけど。」

そう笑う木更津に俺はブンブンと首を振った。



「ごめんね、暗い話をしているつもりはないんだ。
僕はすっかり立ち直っているしね。
光弥さんには感謝してる。僕を愛して育ててくれたんだから。
そう言う意味では、光弥さんに引き合わせてくれた点だけ、父さんにも感謝しなきゃね。」


そうして、一通り彼の話が終わると、


「さて、本題に戻ろうか。」
と、木更津が話を戻した。




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