
エスキス アムール
第50章 甘えたい甘えられたい
「それで、僕が甘えたいとか何とかって話だけど」
「……」
「僕はね、波留くんが僕だけを見て、僕を求めてくれればそれでいいんだよ。
もっと甘えて、もっと僕を必要として、もっと言えば…僕を求めて求めておかしくなって泣いてるところをみたいかな、なんて。」
…なんか恐ろしい事を聞いている気がする…。
「確かに僕は小さい頃は何もできなくて。
出来ないとすぐに泣いたり、甘えたりしてたけど、それは小さい頃の話だよ。
波留くんにも、会わせてあげたかったな。光弥さんに。
僕、本当に光弥さんのコピーみたいだから」
「…顔も…?」
「顔は全く違うよ。
彼はもっと僕より上品かな。
けど、言葉遣いとか立ち振る舞いとか。
でも彼は本当に優しかったな。
僕が腹黒いのは残念ながら父親譲りだね。」
よかった、光弥さんに育ててもらって。
木更津が優しいのは、彼のおかげなんだ。
「憧れが強かったんだよね。
今振り返ればあれを恋愛と呼べたのかはよくわからないけど。
……今は、甘えるよりも甘えられたいかな。」
そうして頬を撫でられると、ふいに涙が出そうになって唇を噛んだ。
「波留くんまだ、遠慮してるでしょ?
もっと甘えて。僕を求めてよ。……おかしくなるくらい」
「木更津…」
俺は木更津に手を伸ばすと、思いっきり抱きついた。
