
エスキス アムール
第50章 甘えたい甘えられたい
「どうして嫌なの?」
「…嫌い…」
「波留くんのことが本当に嫌いで、あんなこと言ったんじゃないんだよ。」
とは言いつつも、タカは終始、波留くんを小姑のようにいびっていたし、おまけに変な嘘も吐かれて嫌になっても仕方がないことはわかる。
てっきり、波留くんはそのことに嫌気がさして、タカを気に入らないといったのだと思ったと思い込んでいたけれど、
どうやら違うみたいで。
僕の言葉を聞いて、僕の頚筋に顔を埋めたまま、そうじゃないと必死に首を振っていた。
「なに?波留くん」
「……だって…、」
「ん?」
「あの人、ずっと光平、光平って。
自分のものみたいに…っ
ずっと名前でずっと…っ」
「……」
…そっち?
いびられたことが嫌だったのではなくて、僕の名前を何度も呼んで、ずっと昔から仲が良いアピールをされたことに腹が立ったようだ。
仲が良いアピールというか、昔からの呼び方だから、タカはその点に関してはそんなつもりはないと思うんだけど。
「…波留くんって…」
「…な、なんだよ…」
「可愛いね」
「……っ」
「ダメだよ、離れようなんて」
照れて、僕から体を引き離そうとした彼を腕に力を入れて腕の中に閉じ込める。
「じゃあ波留くんも呼んでよ」
「な、にを…」
「名前。」
そういうと、波留くんの耳が真っ赤になっていくのがわかった。
意外な発見だ。
名前でも照れるんだ。
「や、やだ…」
「どうして?僕は呼んでるでしょ?波留くんって」
一度身体を離して、目を合わせれば、耳だけでなく顔もどんどん赤くなっていく。
