
エスキス アムール
第52章 第二の木更津
「仕事、大変だった…?」
「……。」
俺の問いかけに返事はない。
返事はない代わりに、俺の背中に回る腕の力はどんどん強くなっていく。
痛いくらいなのに、腹と腹の間にできる隙間が無くなっていくみたいで心地好かった。
「……きさらづ……?」
ああ、またやってしまった。
光平、光平と、何度も心の中で練習しているのに、どうしてもできない。
「波留くん……、波留、波留…」
「……んん……ぅ」
珍しく俺の名前を呼び捨てで呼ぶ彼にドキドキしながらも、違和感を感じる。
呼びたいから呼んでいるというより、木更津はどこか、焦っているみたいだった。
キスもどこか荒々しい。
息が苦しくなって、木更津の胸を叩くけど、まるで聞いてもらえず深い深いキスが続く。
「ふ……ぁ…ん、んん…っ」
足の力が抜けていき、木更津の支え無しには立てなくなると、押されてリビングの扉を開き、ソファに押し倒された。
「……はぁ、はぁ…っど……したの……きさ、らづ……っ」
ようやく長いキスから解放されて、喘ぐように空気を取り込みながら、途切れ途切れに聞いてみたけど、木更津は少しも笑うことなくまた近づいてくる。
「……ぁ、も……こ、れいじょ…うは……んんっ」
どうしてか、長く深いキスだけで、中心は熱くなっていて。
これ以上続けられるともう達しそうだった。
