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エスキス アムール

第54章 仲直りしよう





最近何度も発作を起こしていて、今日も発作を起こしたそうだ。
なんとか処置をしてもらったものの、意識が戻らず、今日が峠になると言われたらしい。



「このまま目が覚めなかったら…っ」


矢吹は動揺しているようで、頭を抱えた。



「おい……
おい、矢吹!お前こんなところにいて良いのかよ!何で帰ってきたんだ。何で俺のことを食事に誘ってるんだよ!お母さんの側にいてやれよ!!」

「……………だ…」

「え?」

「僕…っ怖いんだ…怖くて怖くて…っどうしたらいい?母さんが死ぬなんて…考えられないよ…怖い……っ」



怖い怖いと言って、矢吹は俺にしがみついた。
その力ない身体を支える。


俺は母親と言うものを知らない。
でも、大切な人を失うことがどれほど辛くてどれほど怖いことかはわかる。


矢吹は一人で耐えられなくて、逃げ出してきたのだ。

だけどそんなのいけない。
今だって、矢吹のお母さんは必死に病気と戦っているのだから。



迷いなんてなかった。


「矢吹!行くぞ!!」

「…え…ど、どこにっ…」

「病院だよ!お母さんのところ!!」

「い、いいよ…っいいから!」

「だめだ!!
俺が付いてるから。大丈夫だから!」

「……っ」


俺は矢吹を引っ張って、病院へ急いだ。











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