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エスキス アムール

第54章 仲直りしよう







病院に着くと、ナースがすぐによってきて、部屋に連れて行かれた。

いなくなってしまった矢吹のことを探していたようだ。



そのナースの様子を見ても、矢吹のお母さんの状態が本当に良くないことがわかる。



病室に行くと、矢吹のお母さんは静かに眠っているみたいで、とても綺麗だった。



「…母さん……」

「大丈夫だから」


矢吹の手は震えていて、すがるような瞳で俺を見てくる。

その手を握り締めれば、少しだけホッとした顔をした。


こんな時にあれだけど、
そんな矢吹を見て、こいつって木更津と似てないななんて思ってしまった。

声も仕草も立ち振る舞いも、木更津とはそっくりだけど、根本的なものは違う。



「…当たり前か」


二人は赤の他人なわけだし。
双子でもないんだから、性格は違うよな。


なんで俺は矢吹のことをこんなに木更津と重ねてたんだろう。



「…波留くん、もう大丈夫だから。…帰っていいよ」




それから何時間も経って。
朝方になった頃、矢吹がそういった。



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