
エスキス アムール
第57章 直接対決
「聞きたくないの?波留くんのこと。」
一言そう言うと、彼の眉がぴくりと動く。
やはり好きなだけあって、そこは誤魔化せないみたいだ。
波留くんが拒絶するなら、まず外堀から固めてやる。
「…僕ね、波留くんに家に帰らなくていいの?って聞いたんだよ。
でも…波留くん、帰りたくないってさ。」
「……」
「その証拠にさ、連絡一回もないでしょ?波留くんから。」
光平くんは、表情を変えずに珈琲を一口飲んだ。
ふーん、まだ余裕なふりってわけ。
「ああ、まだ時計してるんだ。
波留くん、してなかったなー。
気にしている素振りもないし。」
「……」
「波留くんね、毎日寂しいって言って、毎日僕を抱きしめて寝るんだよ。可愛いよね。甘えちゃってさ。」
「……」
「毎日ご飯も作ってくれるしー」
「……」
だんだん僕は苛立ってきた。
何の反応も示さない。
余裕あるふりしたって、こっちはわかってるんだぞ。
不安で堪らないんだろう?
この野郎。
調子に乗りやがって。
「お前…!!なんとか…」
なんとか言えよ。
そう言って、立ち上がろうとしたとき、光平くんがやっと口を開いた。
