
エスキス アムール
第57章 直接対決
「他には…?」
「え…?」
光平くんは微笑みながら、僕に視線をよこしてそう聞いてきた。
他にって、なんだよ。
「他にはないの?
抱きしめて寝て、ご飯作ってもらって、それだけ?
キスをせがんだり、頭を胸に擦り付けてきたり、甘ったるい声で名前呼んできたりしないの?」
「……っ」
「もっともっと、って先をねだってきたり…」
「…、」
「ああ、まだそこまでいってないのかな。ごめんね。」
全く悪びれていない表情で、ごめんねという彼は全く昔と変わっていない。
いつだって余裕だ。
僕が睨みつけても、なんの効果もない。
「…っ光平くんがショック受けるんじゃないかと思ってね、言わなかっただけ。
それ以上のこと、毎日してるよ。
可愛いよね。余裕がない波留くん」
「…そう。」
むかつくむかつくムカつく。
僕の言葉に彼は微笑むだけだ。
「じゃあ、波留くんのキミへの気持ちは本物ってわけだね。」
「そうだよ。…残念だけど。恋愛って何があるかわからないからね。
もう、諦めてよ。波留くんのこと。もう、答えは出てるんだから。」
「答えは出てる、ね…。
うん、そうかもしれないね。
…じゃあ、そんな波留くんに溺愛されているキミに、おすすめの波留くん料理があるから、教えてあげる。」
「…料理…?」
