
エスキス アムール
第58章 邪魔
「さっき…矢吹のこと突き飛ばしちゃったしなー…」
完全に油断していた。
矢吹には気になっていたとは言われたけど、まさか襲われるとは思っていなかったのだ。
気がついたら、思い切り突き飛ばしていて。
抵抗はしてもあそこまでしなくても良かったなと反省していた。
…矢吹帰ってこないし…。
でも、仕事以外で一人で出かけられるようになったわけだし、回復はしてるよな。
今日あたりにそろそろ帰るって矢吹に伝えようか。
そう、思案して携帯を机の上に置いた時だった。
「…ただいま…」
扉が開く音とともに矢吹の声が聞こえた。
慌てて玄関に向かう。
おかえりというと矢吹は少しだけ笑ってた。
だけど元気がなさそうだ。
やっぱり、さっき突き飛ばしたことが原因だろうか。
「矢吹…さっきは…」
「今、光平くんに会ってきた。」
さっきはごめんと言いかけた俺に、矢吹はそういった。
「え…?」
驚いて、口を噤んで矢吹の言葉を待った。
