
エスキス アムール
第58章 邪魔
「元気そうだったよ。随分」
「…そ、そう…」
元気そうだと聞いて、ホッとする。
だけど、聞きたいことは他にたくさんあった。
「あ、あのさ…」
「…ん?」
「あの…どう…してた?」
「なにが?」
「あの…きさらづ…」
俺のことを何か言っていたのか聞きたかったのだけど、オブラートに包んだら随分遠まわしの聞き方になってしまった。
「だから、元気そうだったよて。」
「あ、ああ、そうだよね。」
ごもっともです。
さっきも教えてくれたことだ。
ならば、と質問を変える。
「あの、さ、その…時計とかはしてた…?」
その質問に矢吹はぽかんとする。
木更津が怒っているのかもわからない。
もしかしたら、あんな出てきかたをして、しかも連絡も一切していないし、木更津からも一切連絡は来ていない。
喧嘩別れのようになっているから、もしかしたらもう別れた対象と思われているかもしれないのだ。
だけど、時計がついていれば。
まだ望みはあるはずだ。
だけど、矢吹は言った。
「時計…?
ああー、付けて、なかったな。」
…………え?
