
エスキス アムール
第58章 邪魔
「矢吹…どうした…?」
「ううん…波留くん…寂しそうだから…」
そう言うと、彼は困ったように少しだけ笑って俯く。
体に回している腕により力を込めると、珍しく僕の手を握ってきた。
今までは僕が抱きしめられる方で、彼がこんなふうに甘えるような仕草をしたことはない。
「矢吹…この間はごめん。」
「…何が…?」
「あの…突き飛ばしちゃって…」
「…ああ、いいよ」
襲おうとした僕が悪いのに、彼は突き飛ばしたことに負い目を感じていたようだ。
僕が謝らなきゃいけないのに。
だけど、僕の口から、謝罪の言葉を出すことはできなかった。
ごめん、波留くん、ごめん…
そう心の中で呟きながら、頚筋にキスを落とした。
「…ん…矢吹…」
びくりと僕の唇を感じながら、波留くんは身を捩って抵抗する。
後ろから抱きしめて、固定しているから、どうにも抵抗しづらいみたいで。
僕はそのまま身体に手を伸ばした。
