
エスキス アムール
第60章 全てを捨てたって
「もう、諦めなよ。
波留くんの気持ちだってこっちに向いてるんだしさ。ほら、諦めは肝心だって言うじゃない。」
「……」
「……なに…笑ってるの?」
僕が言葉を紡ぐと、光平くんはクスッと笑って僕を一瞥した。
その態度にいらっとする。
バカにするのもいい加減にしろよ。
「……、波留くんは僕のものだ。」
「違うよ矢吹。
残念だけど、波留くんはもうずっと前から僕のって決まってるんだよ。
心も、身体もね。
僕から離れるなんてあり得ないし、許さない。」
めちゃくちゃだ。
その自信はどこからくるんだ。
あり得ないし許さないって、波留くんの気持ちはお構いなしなのかよ。
もし、僕を選んだら、それでも無理矢理連れ戻すっていうのか。
ばかばかしい。
そんなことができるわけない。
「波留くんをそんなに離したくないの?
そんなに大事?」
「大事だね。誰よりも、何よりも。」
その答えに僕は彼を嘲笑って馬鹿にした。
