
エスキス アムール
第60章 全てを捨てたって
誰よりも、何よりも大事なんて口先だけだ。
世の中には大事なものはたくさんある。
そんなのは比べられないし同じだけ大事で。
どちらかを選ぶなんて出来るわけがないのだ。
彼の弱点を見つけた。
そうだ。最初からこうすればよかったのだ。
僕は笑って彼を見つめた。
「僕ね木更津議員とは仲良くさせてもらってるんだけど……」
「……」
「もちろん、彼は光平くんと波留くんの交際には反対なはずだよね?
……、もし。このまま波留くんから手を引かないのなら。」
光平くんは落ち着いた様子で僕を見つめていた。
この顔がどんな風に歪むのか楽しみだ。
「潰してもらうよ。光平くんの会社。」
どうして最初から気がつかなかったのだろう。
勝った。
もう、僕のものだ。
僕は笑いが止まらなかった。
