
エスキス アムール
第60章 全てを捨てたって
木更津議員くらいの力があれば、ひとつの会社を潰すことくらい簡単だ。
波留くんと別れさせたなんて教えたら、その見返りとして会社を一つ潰すくらい彼ならしてくれるはず。
日頃は屑みたいな人だけど、こう言うときに役に立つのは彼みたいな人間だ。
「僕の会社を潰す……ね、」
木更津製薬は多くの社員を抱えている。
社長の独断で会社の未来を決めるほど、小さな会社じゃない。
一人二人の社員ではないのだから。
いくら波留くんが大事だと言っても、社員を捨てることを考えたら、優先できないのは目に見えている。
勝ち誇った気持ちで彼の返答を待っていると、光平くんはフッと笑って一言溢した。
「いいよ。」
「……?」
「いいよ。潰して。」
