
エスキス アムール
第60章 全てを捨てたって
その寄っていく人の中でも一番なついていたのが、斎藤という僕と同い年のやつだった。
斎藤は僕と大学が同じで、企業セミナーには一緒に応募して参加した仲だった。
それまでは、僕も斎藤も光平くんの存在を知らなかったし、きっと関わらなければ知っていても、なんとも思わなかっただろう。
けれども、セミナーに入ると光平くんはいて。
斎藤はどんどん彼に惹かれていった。
あのときは、ただ憧れているだけだと思っていたけど、今思えば、男として、彼を好きだったのかもしれない。
はっきりと言えるのは、僕はあの時、斎藤を傷つけたということだ。
