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エスキス アムール

第60章 全てを捨てたって







あの頃、見つけられた光平くんの弱点は父親だった。

有名な政治家ではあったけど、知っている人は知っていて、彼の父親が良い人だという噂は聞かなかった。



僕はよくそういう話を耳にしていたから、まずはその話を斎藤に話した。


斎藤は驚いていたけど、「光平くんとお父さんは違うから」と、聞く耳を持たなかった。



光平くんはお金持ちだけど、それをちらつかせて人を馬鹿にすることもしない。


人を偏見の目で見たりしない。


彼は頭が良いし、絶対にいい社長になる。



それが斎藤の口癖になった。
そのうち、企業セミナー以外でも二人は会うようになって。


二人で会って何をしていたかなんてわからない。

斎藤は光平くんの話になると、いかに才能があって、どれだけいい人かということしか話さなかった。

僕も変なプライドを持っていて、なにしてきたの?なんて光平くんのことを気にしているような質問ができなかったのだ。






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