
エスキス アムール
第66章 木更津の動揺
低くて怒りを含んだような声に、ゾクリとする。
「…」
「波留くんは僕がいなくなったらどうするの?」
「光平がいなくなったら…」
恐ろしくて、そんなこと考えられない。
俺は俺がもし、木更津の下からいなくなったら泣いてくれるのかなとか、動揺するのかなとか、そんな軽い気持ちで聞いたのだけど。
だけど、俺たちはこの先離れることはないし、あるとしたら、死ぬ時で。
木更津が死を連想してもおかしくはないと思った。
そう考えると…
「怖くて…考えられない…」
「そうでしょ?
僕は波留くんがいなくなったときのことなんて考えたくもないよ。
だけど、今どうしても言えって言うなら…」
「言うなら…?」
しばし、木更津は沈黙を置いた。
俺の髪をサラサラと触りながら、見つめてくる。
「一緒に死ぬ」
「……っ」
「今のところ考えられるのはそれかな」
木更津の答えが怖くなって、背中に腕を回して抱きついた。
