
エスキス アムール
第66章 木更津の動揺
「波留くん?」
「大野さんが!!大野さんがぁっ」
「…三嶋。落ち着いて。
落ち着いて、何があったか言ってごらん」
ほら。こんなに私が取り乱していたって、社長が取り乱すことはない。
落ち着いたらダメなの。
今は。これでも一応煽っているんだから。
「あの…あのっ
大野さんが……」
取り乱している振りをしているから、呼吸は無意味に乱れてきた。
そんな私をジッと見つめて言葉を待っている。
「波留くんがどうしたの…?」
「お、大野さん…が…社長、落ち着いて聞いてください…」
「うん?」
私は意を決して、その言葉を発した。
「お、大野さん…事故に遭って…いま病院に……運ばれたって…」
