
エスキス アムール
第66章 木更津の動揺
当然応答はなかったようでため息をつくと私の方に向き直った。
「どこ…っ?どこの病院?」
「あ…あのっ駅の近くの…っ」
病院名を告げると、社長はすぐさま扉に向かおうとする。が、その時、机の上の整頓してあった資料一式が床一面に落ちてしまった。
床一面の紙に、転げた椅子。
散々な部屋だ。
それを片付けようとするのに、震えるてが邪魔をしてうまく紙すら拾えない。
時計を気にしながら、携帯を見ながら、落ちた紙を必死に拾っては落とし。
行動に一貫性は無く、何もかもが中途半端だ。
こんなにスマートに熟せない社長も初めて。
「しゃ、しゃちょうっここはいいので…っ」
「あ、あぁすまない…っ」
青白い顔をした社長は走って扉の前まで行くとドアに手をかけ,
扉を開いた瞬間、固まった。
