《番犬女》は俺のもの
第8章 手段は選ばない
二人は今、青崎高校の体育館倉庫にいる。
そして茜が拘束されているのが…じゃなくて座っているのが、跳び箱の上。
零は積み重なった器械体操用のマットに座っていた。
二人の足下には、5人の不良たちが動けなくなってのびている──
茜は何もしていない。
これは全て零の仕業だ。
彼女が駆けつけたときには不良は全員、零とやり合った後だった。
「やってくれるなお前は……」
「…俺だって驚いたよ、捕まってるはずの茜さんが扉開けて現れたんだから。俺はてっきり……」
「──いい!その話はしなくていい!」
隙あらば例の妄想話を始めようとする零を
茜がすかさず止めにはいる。
「だいたい……なぁ。…最後に私がお前の名を呼んでいるのはいったい何だ。お前に助けを求めると思ってるのか?」
「…いちおう…俺が助けに向かってる設定だし?」
「妄想まで自分勝手だな…ハァ」
溜め息がこぼれる。