《番犬女》は俺のもの
第8章 手段は選ばない
「──? おう、それは何だ?」
「…ん、ああこれ…」
零に近づいた彼女は、ブレザーのポケットからはみ出たものを指さす。
「その財布…女ものだよな」
「そーだよ。…茜さんのじゃないの? 」
彼は白財布を茜に手渡した。
茜の所有物だと思っていた零だが…誘拐の話がたんなるウソならそういうことでもなさそうだ。
茜は財布をまじまじと見た。
「それ、この人達が持ってたんだけど」
零は倒れた男たちを示す。
「私のではない…。変だな、何故こいつらがこの財布を…」
「誰かオネェなのかな」
「──(ムシ)……嫌な予感がしてきた」
《女をあづかった》
あのメモを見たときは、てっきり篠田の彼女らへんが浚われたのかと思っていたが…
「お前、彼女いるのか」
「…片想い中」
「──…。(面倒臭そうなのでスルー)」
ここの倉庫には結局、誰も捕まっていなかった。
ただの篠田を呼び出すウソだったのだと思うのが普通だ。