《番犬女》は俺のもの
第8章 手段は選ばない
まだ終わっていなかった。
しかもこの状況はこちらが不利じゃないか。
「…茜さん?」
心配そうな零の声。
「軽率だった、何も迷わずここに来たけれど…! それを見越して2ヶ所に分かれていたんじゃ…!?」
「…何でそんな面倒なことを? 」
「警察に通報された場合を警戒してだろう」
何処だ?
あいつ等は何処から電話をかけてきた?
茜は先ほどの電話の内容を思い出していた。
「何か手がかり…っ」
さっきの電話──男の声の後ろから、かすかに音楽が流れているのが聴こえた。
「あのメロディーには聴き覚えがある」
「……ふむ」
「何処だったか思い出せない…っ」
「ふむふむ」
「──鬱陶しい相づちを止めろ!」
「…むむ」
いったん零の存在を忘れて、茜は思い出すのに集中しようとした。