《番犬女》は俺のもの
第8章 手段は選ばない
「…落ち着いて下さいッ…そんな危険な物は早くしまって……」
「うるせぇ!! 」
頭に血がのぼったそいつは
でたらめに刃物を振り回す。
「花崎さん…っ」
茜は梗子を背中に庇う。
「警察に捕まることだってな…っ…ハァ、俺は全然怖くねぇ…!!」
「…は!? おいッ篠田よけろー!」
刃物が零の身体を狙った──
「──…」
「危ないぞよけろ!!」
「このぉ!!!」
────…
ナイフを持った男と
茜の叫び声が重なった直後
零の身体に突き立てられたナイフは寸前で止まっていた
「…ゥゥ…くっそ…!!」
ナイフを持つ手を零に握られて
動かせなくなったナイフがカタカタと震えていた
‥‥ポタッ
「──…きゃ…ぁ、血が…!!」
「…篠田……」
《ナイフごと》男の手を掴んだ零の手から…
赤い血が滴っている──
「……ハァ」
零は深く息を吐いた
彼はナイフを止める手にさらに力をこめる
必然的にますます食い込んだ指から血が滲み出た
「…おっ…お前…正気かよ…」
彼の瞳から狂気じみたものを感じ
男は零の手を見て怯え始めた
「……わかったから…ッ は、なせよ…!!」
「──君は…」
「……っ」
眉間に皺を寄せ
かすれた声で零が口をひらく
「…君は…さ‥…、刃物で切られたことがあるのかい…──!? 」
─────