《番犬女》は俺のもの
第10章 見舞い
なので警察側としても学校側としても、二人に何らかの処置をしなくてはいけなくなった。
それに大反対したのが梗子で
これは喧嘩ではなく、相手からの一方的な暴力だったのだと主張した。
『いいんだよ、花崎さん』
『…でもっ』
警察沙汰になった以上…茜はこうなることは予想していたので、素直に受け入れるつもりだった。
けれど、それでまた梗子が自分自身を責める姿を見るのはつらかった。
ところでこの話し合いは
手術を終えたばかりの零の病室で行われたのだが…
『……』
病院のベッドに座って茜と梗子のやり取りを見ていた彼が、爽やかな笑顔で教師に言う。
『…何か勘違いしてるみたいだけど、相手を殴ったのは俺だけですよ』
『……!』
『久藤さんは、何もしてない』
彼にそう言われて、校長と警察は互いに顔を見合わせる。
そして静かに頷いていた──。