《番犬女》は俺のもの
第10章 見舞い
リビングの中央に、ソファと硝子の丸テーブル。
隅にベッドが置かれただけ。
壁一面の大きなガラスにはカーテンすらかかっていないので、夜の街が目の前に迫ってくる。
“ テレビも無い…か ”
おそらく、家具が占めているのは白いフローリングの五分の一ほどの空間だろう。
それだけに、零家の家具はぽつんとしていた。
「……!」
ベッドを見ていた茜が気づく。
「家族の方はいないのか…?」
そう、彼はここで一人暮らしをしていたのだ。
リビングの他に寝室らしき部屋がついているけれど、少し開いた扉から中の風景を見る限り、そこは本当に何もなかった。
“ 大学生でもないのに何故一人暮らしを… ”
零は凰鳴に転校してきたのだ。親の転勤だとかの理由を彼女は想像していた。
しかし…そうではないらしい。