《番犬女》は俺のもの
第10章 見舞い
キッチンにいってお湯を沸かし始めた零。
茜は何もない部屋を眺めながら、制鞄を担いだままキッチンの彼に声をかける。
「停学になってからずっとこの部屋で過ごしていたのか?」
他校の生徒を殴った零は、一週間の停学処分になっていた。
本来なら茜も同じような処分を受ける筈だったのだけれど…。
“ 篠田が私は何もしていないと警察に…”
だから自分は停学処分にならなかったわけだが
「──…」
「……はい、これ」
零から見舞い袋に入っていた菓子をひとつ受けとる。
「俺だけで食べきれないし…、茜さんも食べなよ」
「……篠田」
そうだな、きちんと言っておかなければ
「すまない…。礼を言うのが遅れた」
「……え、あ、…うん。いいよ」
「‥‥‥」
「?」
「…違う」
「え」
「 " これ " の事じゃなくて…!」
「…あっ、何? …お菓子の事じゃないの?」
むちゃくちゃお腹減らしてたのかと思ったのに
紙袋からもうひとつ取り出そうとしていた零はその手を止めた。