《番犬女》は俺のもの
第10章 見舞い
もっと言えば
家庭で手におえなくなった息子を、学校や教師に押し付けているようにもとれてしまう。
「同情ってわけじゃないが…憎みきれない」
茜はコップに口をつける。
熱いそれを少し含んで口を閉じた。
“ 紅茶か…。飲みやすい味だな ”
普段は紅茶なんて飲まない彼女だが、零の注いだこれは抵抗なく飲める味だった。
「──…」
零は自分の紅茶を飲みながら軽く俯く。
「…青崎の男子生徒は、親に見放された者の集まりってこと?」
「そこまで言い切るつもりはないけどな…っ」
この時の彼の表情を、茜が見ることはなかった。
この時の彼の声色の微妙な変化に、茜が気がつくことはなかった。
相変わらず彼女はソファにも座らずに立ったままで
零も同じように立ったままで──。