《番犬女》は俺のもの
第2章 宝物
「あ、か、ね、ちゃん」
「……っ」
誰もいないはずの屋上で、後ろから声がかかった。
包みを開けて弁当を広げていた茜は驚きとともに振り向く。
「──花崎さん」
「…またひとりで食べてるの?」
「うん、まぁ」
「わたしのクラスの友達も、みんな茜ちゃんと食べたがってるんだよ?」
やれやれといった様子で、梗子は彼女の隣に同じように腰を下ろした。
廊下を歩く茜を見かけたので追いかけてみたら…思った通り、今日もまたここで食べようとしていた。
「…スカートが汚れる」
自分の擦りきれたスカートそっちのけで、茜はそんなことを言う。
「平気よ、汚れたら洗えばいいんですもの」
「……(汗)」
そりゃそうだけどさ…っ
「わたしも今日はここで食べようかなっ」
梗子は持ってきた自分の弁当をポンっと置いて、そして茜の弁当を覗き見た。
…初めて彼女の弁当を見た者は、二度見か三度見くらいするに違いない
梗子はすでに慣れていたから
何も突っ込まないけれど……っ