《番犬女》は俺のもの
第14章 水も滴るイイ女
腕を掴む手を振りきって駆け出す。
「──行かせない」
「…っ」
しかし、更衣室の前の通路に零が立ち塞がった。
普段の茜なら殴るなり蹴るなりして道を開けさせただろうが、今はそれができない。
目の前の男には近付けない──
…どうすればいい?
茜は追い詰められたネズミのごとく狼狽えた。
「俺が怖いの?」
「…く、来るなよ!」
「──!」
通路を塞いだまま零が近付くと
後ずさった茜は壁に背をつけた。
だが、壁沿いに逃げた彼女は誤って
女子更衣室の向かいに面した、男子更衣室の扉にぶつかった。
グラッ──
「茜さん…っ?」
体重がかかり扉はゆっくりと開いて、ぶつかった茜はバランスを崩して男子更衣室の中に倒れた。
零が駆け寄るも間に合わず、背をしたたかに床に打ち付ける。